はじめに
ビール醸造は、いくつかの重要な工程を経て完成します。この記事では、醸造プロセスで使われる専門用語を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
醸造プロセスの用語
マッシング (Mashing・糖化)
粉砕した麦芽を温水と混ぜ、デンプンを糖に分解するプロセス。
温度帯:
- 60-65℃: ベータアミラーゼが活発、発酵性の高い糖を生成、ドライな仕上がり
- 67-70℃: アルファアミラーゼが活発、発酵性の低い糖を生成、甘い仕上がり
- 65-67℃: バランス型 (最も一般的)
時間: 通常60-90分
ポイント:
- 温度管理が最も重要
- 温度によって仕上がりの味わいが大きく変わる
- マッシング温度が高いと甘く、低いとドライになる
スパージング (Sparging)
麦芽粕に温水をかけ、残った糖分を洗い流して回収するプロセス。
ポイント:
- 75-78℃のお湯を使用
- ゆっくりと行う (急ぐと濁りの原因)
- pH 5.8以上にならないよう注意 (タンニン抽出防止)
目的:
- 麦芽に残った糖分を最大限回収する
- 効率よく麦汁を抽出する
- 適切な濃度の麦汁を得る
煮沸 (Boiling)
麦汁を煮沸し、ホップを加えて苦味と香りをつけるプロセス。
目的:
- 殺菌
- タンパク質の凝固
- ホップ成分の抽出
- 水分の蒸発による濃縮
時間: 通常60-90分
ホップ投入のタイミング:
- 煮沸開始時 (60分): 苦味を抽出 (ビタリングホップ)
- 煮沸終了15分前: 香りと苦味のバランス
- 煮沸終了5分前: 香りを強調 (アロマホップ)
- 火を止めた後: 最も強い香り (ウィールプールホッピング)
発酵 (Fermentation)
酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに分解するプロセス。
種類:
- 主発酵: 最初の1週間、活発な発酵
- 二次発酵: 次の1-2週間、ゆっくりと熟成
- ボトル内発酵: プライミングシュガーを加えて炭酸化
発酵温度:
- エール: 18-24℃
- ラガー: 8-15℃
発酵の見極め:
- エアロックの泡が止まる
- 比重が安定する (2-3日間変化なし)
- 通常1-2週間で主発酵完了
クーリング (Cooling)
煮沸後の麦汁を急速に冷却するプロセス。
重要性:
- 雑菌の繁殖を防ぐ
- 酵母を投入できる温度まで下げる
- タンパク質を凝固させる (コールドブレイク)
目標温度:
- エール酵母: 18-20℃
- ラガー酵母: 10-15℃
方法:
- 冷水浴
- イマージョンチラー
- プレートチラー
その他の重要な用語
プライミングシュガー
ボトリング時に加える糖分。瓶内で二次発酵し、炭酸ガスを生成する。
量: 20リットルに対して100-150g
種類:
- コーンシュガー (最も一般的)
- テーブルシュガー
- 麦芽エキス
- ハチミツ (風味が加わる)
トラブ (Trub)
煮沸後や発酵後に底に沈む沈殿物 (ホップカス、タンパク質、酵母など)。
扱い: 移送時には残す (雑味の原因になる)
種類:
- ホットトラブ: 煮沸後の沈殿物
- コールドトラブ: 発酵後の沈殿物
サニタイゼーション (除菌)
醸造器具を殺菌して、雑菌混入を防ぐこと。
重要性: ビール作りで最も大切な作業の一つ
方法:
- スターサン (Star San) などの除菌剤
- 煮沸消毒
- アルコール消毒
タイミング:
- 発酵容器使用前
- ボトリング器具使用前
- 麦汁に触れるすべての器具
まとめ
醸造プロセスの用語を理解することで、レシピの指示をより正確に理解でき、より良いビールを作ることができます。
覚えておきたいプロセス:
- マッシング (糖化)
- スパージング (糖分回収)
- 煮沸 (ホップ添加)
- 発酵 (アルコール生成)
- サニタイゼーション (除菌)
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